「回転台のいらない機関車」
伊予鉄道後温泉駅は松山市の中心部と市のはずれにある道後温泉とを結ぶ市内電車である城南線の終着駅である。夏目漱石の「坊っちゃん」の時代にあわせて明治時代の洋風建築にて復元された駅舎は、四国最大の温泉観光地である道後を「坊っちゃん」・「坂の上の雲」のイメージに定着させることに一役買っている。
駅舎とともに明治の軽便鉄道時代の伊予鉄を復元したのが、いまや松山の名物となった「坊っちゃん列車」である。姿かたちとも当時にドイツから輸入したハイカラな小型蒸気機関車そのものであるが、まさかこの時代に四国最大の都市である松山市の真ん中を黒煙を吐いて走らせるわけにも行かず、中身は実はディーゼル車で煙突からの黒煙ならぬ白煙と蒸気機関の音はダミーである。しかしそのミニSL風ディーゼル列車が人口50万都市の真ん中を、普通に走っていること自体が素晴らしいのである(運行開始に当たっては大変苦労されたらしい)。 ところで前後ろがはっきりしている蒸気機関車である以上、その宿命として終着駅の引き上げ線には向きを180度回転させる回転台が必要であるが、この駅にはそれが見当たらない。隣にバス用のターンテーブル(これはこれでとても珍しい)があるだけである。実はこの坊っちゃん列車、ミニSL風ディーゼル車にしかできない技をもっている。駅で降りてそのまま機関車と一緒に引込み線に出てみればその「技」を見ることが出来るのである(写真参照)。車体が小さくて軽いミニSL風ディーゼル車ならではの人間と機関車の技である。なんともほほえましい機関車扱いも、明治時代のよき四国に似合っているからまた不思議である。
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「明治時代の洋風建築でつくられた駅舎。発車時間待ちの列車はモニュメントとして飾られる。」
明治時代の洋風建築でつくられた駅舎。発車時間待ちの列車はモニュメントとして飾られる。
「お客さんを降ろして駅裏に入庫してくる列車」
お客さんを降ろして駅裏に入庫してくる列車
「停車すると駅員さんが二人でどっこいしょ」
停車すると駅員さんが二人でどっこいしょ
「なんと手動で機関車を回転させる」
なんと手動で機関車を回転させる
「そのまま向きを変えて上り列車に」
そのまま向きを変えて上り列車に
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