「列車通過待ちのための駅で田舎の時間を体感する」
大浦駅は切符の自販機も置かれていないまったくのホームだけの駅である。斎灘(いつきなだ)沿いに走る国道196号線に張り付いたような狭い大浦の集落では、車が一台通れるか通れないかの路地が縦横斜めに家々を結びつけている。従って大浦駅前には車を駐車できる空き地も無く、おそらく人々は家から徒歩で駅に出て列車で30分ほどの松山市街にむかうのである。
もともと列車が交差するための信号所だったこの駅は、本線から引き込まれた支線側にホームがつけられているせいで、構内の線路は複線であるものの1線はホームも乗り場もない(写真参照)。通常であれば両側もしくは真ん中にあるべきホームが片側にしかないのである。マニアにとっては珍しいレイアウトであるらしいが、我々一般人はこの駅に降り立っても気がつかない。 この集落は四国の典型的な海辺の閑村である。時たま走り抜ける特急列車を除いては駅はまるで時間の止まった空間となる。次の電車が来るまでの約一時間、ホームでぼぉっと過ごすのもよし、町歩きをするのもよし、国道側の海岸に出てみるのもよし、なんにもないところを時間を贅沢に過ごすことができよう。
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「海と国道だけの集落である。」
海と国道だけの集落である。
「駅の正面玄関。たいへんつつましい駅看板が。」
駅の正面玄関。たいへんつつましい駅看板が。
「ホームからの眺め。典型的な漁村の向こうは「斎灘(いつきなだ)」。そのまた向こうは広島県。」
ホームからの眺め。典型的な漁村の向こうは「斎灘(いつきなだ)」。そのまた向こうは広島県。
「向こう側の線路にはホームが無いので列車の相互乗り換えは出来ない」
向こう側の線路にはホームが無いので列車の相互乗り換えは出来ない
「・・・と思ったら特急列車が駆け抜けて行った。実はそちらが本線である。」
・・・と思ったら特急列車が駆け抜けて行った。実はそちらが本線である。
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