「エコケーブルカーのはずだが・・・」
安田駅から安田川沿いにバスで山中に40分ほど分け入ると馬路村である。ここは柚子と温泉の村である。今は観光で生計を立てているが、ついこの間までは、まったくの林業のみの町であり、切り出した木材を運ぶための蒸気機関車の森林鉄道が田野町まで敷設された。明治44年のことである。木材とともに物資や人(運輸局さんごめんなさい)まで運んでいたが、戦後になり上流のダム開発のために全線がそのまま道路に置き換えられて廃線となったのである。今でも県道のところどころにその遺構を見ることが出来る。
馬路温泉のインクラインは、そのころの木材運搬軌道を復活させライドとして提供しているものである。インクラインとは簡単に言えば貨物専用の産業用ケーブルカーのことである。主に山岳地での材木の輸送やダム工事現場の資材輸送のために造られる軌道である。
この馬路村インクラインは今流行のエコロジー向けに特別に改造された水力式となっている。重りと車両がケーブルで繋がれ井戸の釣瓶のように頂上の滑車を跨いで釣り下げられている。上りのときは片方の重りの重量に引っ張られて車両が上昇し、下りのときはその車両本体に付属するタンクに上駅で水を貯め込んで自重を重くして下降してくる。そして下駅でその水を抜くとまた上昇する・・・という原理である。
説明板にも水力式のエコパワーと表記されているが、よく見ると頂上の上駅付近に川や湧き水らしきものはない。そこでタンクに補給されている水は下から電動ポンプで強制的に吸いあげているので実はなんの自然エネルギにもなってはいない。むしろ物理学的にいうと初めから電動モーターと歯車とで車両を引っ張りあげたほうが無駄なエネルギーを使わずによっぽどのエコであると思うのだが、そんなことを言うと見学に訪れる子供さん方の夢を壊すので黙っておく。(笑)
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「上りは有料・下りは無料。(画像をクリックすると拡大)」
上りは有料・下りは無料。(画像をクリックすると拡大)
「インクラインの説明看板」
インクラインの説明看板
「数人乗りのミニケーブルカー」
数人乗りのミニケーブルカー
「距離は短いが急角度である」
距離は短いが急角度である
「近隣には魚梁瀬森林鉄道の本物の産業遺跡が数多く遺されている」
近隣には魚梁瀬森林鉄道の本物の産業遺跡が数多く遺されている
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